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香港と日本、どちらに会社をつくるか税率・費用・手続きを実務目線で比較【2026年版】

法人設立

香港への進出を考え始めた方から、最初にいただく質問はほぼ決まっています。

「香港に法人を作るべきでしょうか。それとも日本のままがいいでしょうか」

答えを先に申し上げます。

判断の軸は「どこでビジネスをするか」です。香港やアジアに事業の拠点を置き、そこで商売をするなら香港法人には大きな意味があります。ビジネスの実体が日本にあるなら、日本法人のままの方が良いケースが多い。

もちろん、実際にはもう少し細かい要素が絡みます。この記事では、香港で27年、法人設立の実務に携わってきた立場から、税率・費用・手続き・そして見落とされがちな落とし穴まで、判断に必要な材料を並べます。

読み終えたとき、ご自身のケースで「どちらか」を考えられる状態になることが、この記事のゴールです。

税率の比較 — 数字はたしかに違う

まず、多くの方が最初に気にする税率です。

法人の利益にかかる税金

香港日本
税率利益200万HKDまで 8.25%
超えた分 16.5%
実効税率 約30〜31%
消費税なし10%
キャピタルゲイン課税(株や資産の売却益への税金)なしあり
配当への課税なしあり(源泉徴収)

香港の法人税(利得税)は二段階制です。利益のうち最初の200万香港ドル(約4,000万円)には8.25%、それを超えた部分には16.5%がかかります。2026/27年度もこの税率は据え置かれています。

日本は法人税・住民税・事業税を合わせた実質の負担率(実効税率)が約30%。さらに2026年4月以降に始まる事業年度からは防衛特別法人税が加わり、負担はわずかに上がります。

単純比較なら、香港の税負担は日本の半分以下です。

香港に「ない」税金

香港には消費税がありません。株や資産を売って得た利益への税金(キャピタルゲイン課税)も、会社が株主に利益を分配するときの税金(配当課税)も、相続税もありません。税の種類が少ないぶん、申告の手間も小さくなります。

ただし、注意点が二つ

一つ目。二段階税率の低い方(8.25%)を使えるのは、グループ内で1社だけです。複数の会社を持つ場合、全社が低税率になるわけではありません。

二つ目。香港は「源泉地主義」という考え方をとっています。難しく聞こえますが、意味は単純で、香港の中で生まれた利益にだけ税金がかかるというルールです。香港外で稼いだ利益は、申請により免税になり得ます。これは香港の大きな特徴ですが、認められるかどうかは実務上の論点です(後述します)。

手続きと日数 — 設立そのものは難しくない

香港での設立

香港の法人設立は、手続きとしては世界でも簡単な部類です。資本金の最低額の規制は実質なく、株主・取締役は1名から、日本在住のままでも設立できます。

実務では、設立登記の完了までは10日ほどです。商業登記証を入手すれば、事業を始めること自体はすぐにできます。

ただし、現実には取引にお金の出し入れが伴います。つまり実質的なスタートは銀行口座の開設後です。ここが見落とされがちな部分で、口座開設にかかる期間は銀行によってまちまちですが、HSBCのような伝統的な大手銀行では2〜3ヶ月かかります。

「登記10日」と「口座2〜3ヶ月」。設立スケジュールを組むときは、後者を基準に考えてください。

日本での設立

日本の株式会社設立は、定款認証と登記で2〜3週間程度、費用は登録免許税など約25万円からが一般的です。合同会社ならもう少し安く、早くなります。

手続きの難易度だけで言えば、どちらも「専門家に頼めば進む」レベルです。差がつくのは設立の後です。

費用 — 2年目以降が本番

ここは、設立を検討している方に必ずお伝えしている部分です。

法人は、作るより維持する方にお金がかかります。

香港法人の維持に毎年かかるもの

  • 会社秘書(カンパニーセクレタリー): 登記関連の書類作成や当局への届出を担う、法律で設置が義務付けられた役割です。「秘書」という名前ですが事務員のことではなく、通常は専門会社に委託します
  • 登記住所の維持
  • ビジネスレジストレーション(商業登記証。事業を営む許可証のようなもの)の毎年の更新
  • 監査(オーディット): 会計士に決算書類をチェックしてもらう手続きです。日本では大企業だけの義務ですが、香港では規模にかかわらず毎年必要です

実務の目安として、登記住所と商業登記証の費用を含む法人管理費は、初年度で2万香港ドル(約40万円)ほど、2年目以降は年1.5万香港ドル(約30万円)ほどです。

これに監査費用が別途加わります。監査費用は事業の規模(取引量)によって変わるため一概には言えませんが、「管理費+監査費」が毎年出ていく、という構造は覚えておいてください。

なお、決算は設立後18ヶ月以内に最初のものが必要です。事業を動かしていない場合は、税務申告書(タックスリターン)でその旨を申告します。休眠状態でも管理費そのものは変わりません。「動かしていないから費用ゼロ」にはならない、というのが実務です。

日本法人の維持に毎年かかるもの

日本法人は、赤字でも法人住民税の均等割(最低で年約7万円)がかかります。税理士顧問料を含めると、小規模でも年30万〜50万円程度を見込む方が多いようです。

比較のポイント

「香港は税金が安い」は事実ですが、維持費まで含めた総コストで比べる必要があります。利益が小さいうちは、税率の差より維持費の差の方が効くことがあります。

見落とされがちな論点① — オフショア所得免税は「自動」ではない

香港の魅力としてよく語られるのが、先ほど触れた源泉地主義です。「香港外で稼いだ利益は非課税にできる」という話です。

これは制度として存在します。ただし、申請すれば自動的に認められるものではありません。

税務局に対して、その利益が香港外で生じたことを説明し、認められる必要があります。取引の実態、契約や意思決定が行われた場所などを、資料で示していくことになります。近年は国際的な課税ルールの変化(後述)もあり、審査の目は以前より細かくなっています。

「非課税にできる可能性がある」と「必ず非課税になる」の間には、実務上の距離があります。この制度を前提に事業設計をする場合は、必ず事前に専門家へ相談してください。

見落とされがちな論点② — 日本側の税金は消えない

この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

香港に法人を作っても、日本の税金から自由になるわけではありません。特に次の二つは、設立前に必ず知っておくべき論点です。

タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)

タックスヘイブンとは、税金が極めて安い国や地域のことです。日本には、これを使った税逃れを防ぐ制度があります。

日本に住む人や日本法人が、税率の低い国の会社を実質的に支配している場合、その会社の利益は、日本の利益と合算して日本で課税されることがあります。目安として、外国子会社の税負担率が20%未満の場合に検討対象となります。香港の税率はこれを下回るため、香港法人は基本的にこの制度の視野に入ります。

合算を免れるには、その会社が「実体のある事業」を営んでいることなど、いくつかの基準を満たす必要があります。事務所があるか、そこで実際に事業が管理されているか、といった観点です。

つまり、「ペーパーカンパニーを香港に作って税金を下げる」は、制度上ほぼ成立しません。香港法人が意味を持つのは、香港に実体のある事業がある場合です。

この制度は細部が複雑で、2026年度の税制改正でも一部見直しが入っています。該当しそうな方は、必ず国際税務に詳しい税理士に確認してください。

日本居住のまま香港法人から報酬を受け取る場合

日本に住んでいる限り、香港法人から受け取る役員報酬や配当には日本の所得税がかかります。「香港法人だから日本の税金はかからない」という誤解は、後で大きな問題になります。

グローバル最低税の流れ

参考として、世界の潮流にも触れておきます。連結収益7.5億ユーロ以上の巨大企業グループには、どの国にいても最低15%の税負担を課す世界共通の仕組みが始まっており、香港も2025年から適用しています。中小企業には直接関係しませんが、「税率の低さだけで場所を選ぶ時代は終わりつつある」という方向性は、知っておいて損はありません。

どちらが向くか — 判断のチェックリスト

ここまでの内容を、判断材料として並べます。

香港法人が向くケース

  • 香港・中国・アジアで売上が立つ、または立てる計画がある
  • 香港に実体(オフィス・人・業務)を置く予定がある
  • 海外取引が多く、消費税や配当課税のない環境が効く
  • 資産運用や投資の拠点をアジアに置きたい

日本法人のままが良いケース

  • 売上のほとんどが日本国内の顧客
  • 香港に実体を置く予定がない
  • 「税金が安くなりそう」が主な動機になっている
  • 年間の維持費(監査費用を含む)が利益に対して重い

現場からのひとこと

最後の二つに当てはまる方には、私たちは正直に「今は日本のままが良いと思います」とお伝えしています。

まとめ

  • 香港の法人税は8.25%〜16.5%。消費税・キャピタルゲイン課税・配当課税もなく、税制面の魅力は本物
  • ただし設立後の維持費(会社秘書・監査など)まで含めた総コストで判断する
  • オフショア所得免税は自動ではなく、認められるための実務がある
  • 日本側のタックスヘイブン対策税制により、実体のない香港法人は日本で課税され得る
  • 判断の軸は「どこでビジネスをするか」、すなわち「香港に実体を置けるか」

最後に、現場でよく見る失敗のかたちをひとつ。

「税金が安くなる」という気持ちが先行して、香港で利益を上げる仕組みや実行計画の準備が不十分なまま設立してしまうケースです。こうした法人は、維持費だけを払い続けた末に、そのまま閉鎖に至ることが少なくありません。

香港法人は、正しく使えば非常に強い選択肢です。同時に、向いていない方が作ると、維持費だけが出ていく箱になります。

私たちは設立のご依頼を受ける前に、まず「そもそも香港に作るべきか」からお話ししています。ご自身のケースがどちらに近いか、判断がつかない方は、お気軽にご相談ください。

※本記事は2026年7月時点の制度にもとづく情報です。税率・制度は変更される場合があります。日本側の課税については、必ず税理士等の専門家にご確認ください。本記事は特定の税務上の取り扱いを保証するものではありません。

執筆:CSV CONSULTING LIMITED(支援実績7,000社以上/代表のビザコンサル経験27年)

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